失くさないカギ

祖父が購入した別荘を訪れるのは、1年に1度あるかないか。
別荘地に近づくと、「空き巣ドロボウ」、「警戒中」、「不審火」など、物騒な看板を多く見るようになった。
妻、「うちの別荘は大丈夫かしら?」」
大丈夫ではないのは毎度のこと、1年ぶりに訪れると、庭の草がボーボーに生えていました。
妻、「車にいて良い?」
妻は都会育ちのため、虫が苦手。
娘、「パパ、頑張って」
娘も妻に似て、虫が苦手。
私だって都会育ちで虫は苦手なのだが、ボーボーに生えた草刈りをしないと別荘に近づけない。
ボーボーに生えた草は、最新式の草刈り機で刈る。
別荘にも草刈り機があるのですが、ボーボーに草が生えていると、草刈り機が保管してある倉庫までたどり着けない。

草刈り機の電源をOFFにすると、クラクションが鳴った、鳴らしたのは妻。
私、「どうしたの?」
妻、「◯△◇◯△◇」
妻が何を言っているのか聞こえないのは、虫が嫌いな妻は車の窓を開けないから。
妻の口パクで分かったのは、カギが開くかどうか。
別荘を1年ぶりに訪れると、鍵穴が錆び付いて開かなかったことがある。

私、「カギを渡して」
妻、「◯△◇◯△◇」
私、「何だって?」
妻、「◯△◇◯△◇」
埒が明かないと思ったのか、後部座席に座っている娘が窓を開け
娘、「別荘のカギはパパが持ってるんじゃないの?」
私、「パパじゃないよ、ママだよ」
自分のせいにされた妻、「私じゃないわよ」
私、「僕でもないよ」
後部座席の娘が、両親のことを呆れた目で見ていたのは、以前も同じことがあったから。
娘、「どうするの?また、鍵屋さんに来てもらうの?」
妻、「仕方ないじゃない、家に取りに帰るのは大変なんだから」
娘、「恥ずかしい」

前回と同じ鍵屋さんに来てもらうと、
鍵屋さん、「今日は2人なの?お嬢ちゃんは来てないの?」
車の後部座席に隠れていた娘は、鍵屋さんに見付かり顔が赤くなった。
鍵屋さんにスペアーキーを作ってもらったため、家に置いて来たカギを合わせると、計3つのカギがある。
各自で別荘のカギを持つことになったのですが、またしても、同じ失敗をしてしまい、現在は指認証で開けられるカギになっています。

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